こんにちは!アイカーマガジン編集部です!
日産のミニバン「セレナ」の中でも、ひときわ異彩を放つグレードが「AUTECH(オーテック)」です。
「ハイウェイスター」や「ルキシオン」といった他グレードとの最大の違いは、メーカー直系のカスタムカーであるため、素材の質感や走行性能がワンランク上に引き上げられている点にあります。

単なる見た目のドレスアップにとどまらず、「プレミアムスポーティ」という独自のポジションを確立し、所有する満足感を高めていることが特徴です。
本記事では、カタログスペックだけでは分かりにくい標準車との具体的な違いや、オーテックを選ぶべき理由について詳しく解説します。
ハイウェイスター・オーテック・ルキシオンの違いを一覧で比較

セレナには複数のグレードが用意されていますが、「ハイウェイスター」「オーテック」「ルキシオン」は、立ち位置や魅力が大きく異なります。
それぞれの特徴を理解せずに選んでしまうと、「思っていたのと違った」と感じてしまう可能性もあるでしょう。
デザイン・装備・価格・走行性能の違いは以下の通りです。
セレナ主要グレード比較表
| 項目 | ハイウェイスター | オーテック | ルキシオン |
| 位置づけ | 標準+スポーティ | メーカー直系カスタム | 最上級・フラッグシップ |
| デザイン | メッキ基調で迫力重視 | 専用エアロ+上質スポーティ | シンプルかつ上質 |
| フロントグリル | メッキグリル | 専用ドットパターングリル | 専用プレミアムグリル |
| エアロパーツ | 標準 | 専用メタル調エアロ | 専用デザイン(控えめ) |
| ボディカラー | 共通色中心 | 専用色(カスピアンブルー等) | 専用色あり |
| 内装素材 | ファブリック中心 | 専用レザレット+ブルーステッチ | 本革シート |
| インテリア加飾 | シルバー調 | ダークウッド調 | 上質木目+専用仕立て |
| 走行性能 | 標準 | 標準/SPORTS SPEC設定あり | 快適性重視 |
| サスペンション | 標準 | 標準(SPORTS SPECで専用) | 快適性チューニング |
| タイヤサイズ | 16インチ | 17インチ(SPORTS SPEC) | 16インチ |
| パワートレイン | ガソリン/e-POWER | ガソリン/e-POWER | e-POWER専用 |
| e-4ORCE | 設定あり | 設定あり | 標準設定 |
| 先進装備 | 上位グレードで充実 | 上位グレード準拠 | ほぼフル標準 |
| 新車価格目安 | 約320万〜 | 約360万〜430万円 | 約480万〜 |
| リセール傾向 | 安定 | やや高め | 非常に高い |
| 向いている人 | コスパ重視・万人向け | デザイン・特別感重視 | 快適性・最新装備重視 |
表を見ると分かる通り、「ハイウェイスター」はコストパフォーマンス重視、「ルキシオン」は快適性と装備を最優先した最上級モデルです。
その中間に位置するのが「オーテック」で、「見た目の特別感」「上質な内装」「走りの安定感」をバランス良く取り入れた、“デザインと実用性を両立したグレード”といえます。
ここからは、オーテックならではの魅力を外観・内装・走行性能といったポイントごとに詳しく見ていきましょう。
標準グレードとは一線を画す「プレミアムスポーティ」な外観

セレナオーテックを検討する際、まず目を引くのが独特なエクステリアデザインです。
標準グレードのセレナが持つ親しみやすさや、ハイウェイスターの押し出し感とは異なり、オーテックは「品格」と「スポーティさ」を融合させたデザイン言語を持っています。
湘南の海をイメージした専用フロントグリル

フロントマスクの印象を左右するグリルには、オーテック発祥の地である湘南・茅ヶ崎の海面が光を受けて輝く様をモチーフにしたドットパターンが採用されています。
一般的なメッキグリルが「面」で光を反射するのに対し、このドットグリルは多角的な「点」で光を捉えます。見る角度によって表情が変わり、緻密な工芸品のような印象を与えます。
専用グリルによって、ミニバン特有の「箱型感」が薄れ、低重心でワイドなスタンスが強調されています。
空力と質感を両立するメタル調エアロパーツ

バンパー下部やサイドシルには、メタル調フィニッシュの専用エアロパーツが装着されています。「白波」をイメージしたというこのパーツ類は、車両の下回りを視覚的に引き締める効果があります。
低く構えたプロポーションを強調する「専用シグネチャーLED」と相まって、静止していても走りの良さを予感させるデザインになっています。
標準車では樹脂パーツやボディ同色となる部分に金属の質感が加わることで、欧州車のような重厚な雰囲気を醸し出しています。
塗装品質にこだわった専用ボディカラーと2トーン設定
ボディカラーにもオーテックならではのこだわりが見られます。「カスピアンブルー」はオーテック専用色であり、このモデルを象徴するカラーです。
このブルーはただ鮮やかなだけではありません。光の当たり方で深みのある紺色から鮮烈な青へと変化し、ボディの抑揚を美しく見せます。ルーフをダイヤモンドブラックにした2トーンカラーを選ぶことで、より引き締まったスポーティな印象になります。もちろん、プリズムホワイトやダイヤモンドブラックといった定番色も選択可能ですが、街中での存在感を重視するなら、専用色は外せない選択肢となるでしょう。
上質さと機能美を追求した専用インテリア

ドアを開けた瞬間に感じる空気感の違いも、オーテックの大きな魅力です。
ベースとなるセレナの広さや使い勝手はそのままに、素材と仕立てをアップグレードすることで、まるで高級ラウンジのような空間が演出されています。
手触りと見た目にこだわったレザレットシート
シート地には、オーテック専用の「レザレット(人工皮革)」が採用されています。ファブリックシートが主体の標準グレードに対して、しっとりとした手触りと適度な張りを持つレザレットは、座った瞬間のフィット感が異なります。
特筆すべきは、シートやステアリング、ドアトリムなどに施された「ブルーステッチ」です。

ブランドカラーであるブルーをアクセントとして正確に縫い込むことで、黒基調のインテリアに知的な華やかさを添えています。背もたれ部分には「AUTECH」の刺繍も施されており、オーナーの所有欲を満たしてくれるポイントです。
落ち着きを与えるダークウッド調フィニッシュ

インストルメントパネル周りには、紫檀(したん)の木目調をイメージした「ダークウッド調フィニッシュ」が採用されています。
近年の車内装飾ではカーボン調やピアノブラックが主流ですが、あえてダークウッドを選ぶことで、スポーティさの中にも大人の落ち着きを演出しています。
光が当たるとうっすらと木目が浮かび上がるような繊細な表面処理は、日産の匠の技を感じさせる仕上がりです。
遮音・消臭機能付きの専用フロアカーペット

目に見えにくい部分ですが、ディーラーオプションで用意される専用フロアカーペットにも機能的な違いがあります。
吸音・消臭機能が付加されているため、ロードノイズの低減や車内の快適性向上に寄与します。
また、カーペットにもブルーのステッチとメタル調のエンブレムがあしらわれており、足元から上質さを演出する徹底ぶりです。
パワートレインの違い(e-POWERとガソリン)
セレナオーテックには、e-POWER(FF/e-4ORCE)とガソリン(FF/4WD)が設定されています。
用途や走行環境によって適した選択肢が異なります。
e-POWER(FF/e-4ORCE)の特徴
e-POWERはエンジンで発電し、モーターで走行するシリーズ式ハイブリッドです。
モーター駆動ならではの静粛性と、発進時の力強い加速が魅力です。
e-4ORCEはe-POWER専用の電動4WDで、前後モーターを緻密に制御することで、雪道や雨天時の姿勢安定性を高めています。
特に滑りやすい路面では安心感が大きく、寒冷地ユーザーには大きなメリットとなります。
ガソリンモデルの特徴
ガソリンモデルは価格を抑えやすく、シンプルな構造で扱いやすい点が特徴です。
高速道路中心の走行や、コストパフォーマンス重視の方には適した選択肢と言えるでしょう。
見た目だけではない「走り」のこだわりとSPORTS SPEC
オーテックには、標準車と同じパワートレインを搭載したモデルに加え、走りに特化したチューニングを施した「SPORTS SPEC(スポーツスペック)」という選択肢が用意されています(※グレードにより設定有無あり)。
「ミニバンに走りなど求めていない」と考える方もいるかもしれませんが、実はこのSPORTS SPECこそ、家族を乗せて長距離を移動する機会の多いユーザーにとってメリットが大きいモデルです。
17インチタイヤと専用ホイール

SPORTS SPECでは、代表例としてタイヤサイズが17インチ(215/55ZR17)にアップグレードされ、ミシュランの「PILOT SPORT 5」が装着されます。このタイヤは高いグリップ力と静粛性を両立しており、高速道路でのレーンチェンジや、雨天時の安心感が格段に向上します。
ホイールも専用デザインのダークグラファイトフィニッシュとなり、足元の迫力が違います。見た目のカッコよさと実用的な走行安定性を両立させるための装備です。
専用チューニングサスペンションとボディ補強

SPORTS SPECの真骨頂は、見えない部分の補強にあります。フロントクロスバーやリヤクロスバーといった補強パーツを追加することで、ボディ剛性を高め、サスペンションの動きを適正化しています。
さらに、専用チューニングされたサスペンションと「パフォーマンスダンパー」を採用することで、路面からの微細な振動を吸収。これにより、ドライバーは意のままに車を操る楽しさを感じられ、同乗者は車酔いしにくいフラットな乗り心地を享受できます。
ハンドリングも専用にチューニングされており、背の高いミニバン特有のふらつきが抑えられています。山道や横風の強い高速道路でも修正舵(ハンドルの微調整)が減るため、ロングドライブ後の疲労感が大きく異なります。
先進技術と安全性能の標準化
オーテックグレードは、ベース車両の上位グレードに準じた装備内容となっているため、日産が誇る先進技術も標準装備、あるいはオプションでフル装備することが可能です。
インテリジェントアラウンドビューモニター

車体の大きなミニバンを運転する際、特に狭い駐車場や路地での取り回しには気を使います。オーテックには、上空から見下ろしたような映像で周囲を確認できる「インテリジェントアラウンドビューモニター」が設定されています。移動物検知機能も付いており、死角になりやすい周囲の歩行者や自転車の存在を知らせてくれるため、安全性が大幅に向上します。
高速道路での単調な渋滞走行や長時間の巡航走行においては、アクセル、ブレーキ、ステアリング操作をアシストする「プロパイロット」も搭載可能です。

オーテックの優れた走行安定性とプロパイロットを組み合わせることで、家族旅行などの長距離移動が劇的に楽になります。
価格・維持費・リセールのリアル

オーテックは装備や仕立てが充実している分、標準グレードより車両価格は高めに設定されています。
しかし、購入時の金額だけで判断してしまうと、本来のコストパフォーマンスを見誤ってしまう可能性があります。
ここでは、新車価格の目安に加えて、維持費やリセールバリューといった「長く乗ったときの現実的なコスト」についても整理していきます。
新車価格の目安
e-POWERオーテックの新車価格は、グレードや駆動方式、オプションにより異なりますが、おおよそ360万〜430万円前後が目安です。ハイウェイスター系グレードと比較すると、40万〜100万円程度高くなる傾向があります。
維持費の差は?
車両価格が高くなる分、任意保険料は年間で数千円程度上がる場合があります。一方、自動車税や重量税は同一排気量・重量区分のため大きな差はありません。
リセールバリュー
オーテックは中古市場での人気が高く、標準グレードより5〜10%程度高い価格帯で推移するケースが多いとされています。
条件の良い車両では、ルキシオンに近い残価率を維持する傾向も見られます。
結局、オーテックは「買い」なのか?

ここまで解説してきた通り、セレナオーテックは単なる見た目を重視したグレードではありません。機能に裏打ちされたデザイン、上質な素材、そして(SPORTS SPECにおける)本質的な走行性能の向上が図られています。
価格差以上の価値を見出せるか
標準のハイウェイスターと比較すると価格は上がりますが、後から同等のエアロパーツやアルミホイール、内装の張り替えを行うことを考えれば、メーカー純正のコンプリートカーとしてのコストパフォーマンスは非常に高いと言えます。
また、純正ならではの保証体制や、リセールバリュー(下取り価格)の高さも魅力の一つです。
誰におすすめのモデルか
セレナオーテックは、以下のような方にとって最適な選択肢となります。
- 家族のためにミニバンが必要だが、生活感が出るのは避けたい方
- 人とは違うこだわりの一台に乗りたい方
- 長距離ドライブが多く、運転の疲れを軽減したい方
- 所有することに喜びを感じられる質感を求める方
オーテックは、「便利だから乗る」というミニバンの常識を超え、「乗りたいから乗る」と思わせてくれる車です。
実用性と趣味性を高い次元で両立させたいと思われる方は、一度実車を確認し、質感の違いをぜひ体感してみてくださいね。