こんにちは!アイカーマガジン編集部です!
走行中に「ガタン!」という衝撃があり、気づいたらタイヤがパンクしていた―こうした事故は、雪解け後や大雨の翌日に急増します。修理費用だけでも数万円かかることがあり、「これって誰かに請求できるの?」と思うのは当然です。
実際には、「道路の穴でパンクした場合、どこまで補償されるのか」「本当に行政に請求できるのか」が分からず、泣き寝入りしてしまうケースも少なくありません。
結論から言うと、道路の陥没が原因であれば、道路管理者(国や地方公共団体)に損害賠償を請求できる可能性があります。ただし、無条件に全額補償されるわけではありません。請求が認められる条件、補償される範囲、実際の手続きの順に整理します。
道路の穴の原因は?
はじめに、雪解け時期などに多く見られる「道路の穴」。
こちらは「ポットホール」と呼ばれるもので、特に冬から春先にかけて発生しやすくなります。

原因は「水と寒さ」です。日中、道路の小さなひび割れに雪解け水が入り込み、夜の冷え込みで凍って氷になります。水は氷になると体積が膨張するため、ひび割れを内側からぐっと押し広げてしまうのです。
そこへ車が通過すると、水と氷でダメージを受けて弱くなったアスファルトが、車の重みや衝撃に耐えきれずに崩れ落ちてしまいます。その結果として、穴(ポットホール)が生まれてしまうのです。

道路陥没の責任は、法律上どう定められているのか
それでは、穴が原因でパンクをしてしまった場合、道路の陥没責任はどうなるのでしょうか。
根拠となるのは国家賠償法第2条第1項です。条文には「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる」と明記されています。
つまり、道路の管理・設置に「瑕疵(かし)」があれば、道路管理者が賠償責任を負います。
「瑕疵」とは何か
法律上の瑕疵とは、「通常有すべき安全性を欠いていること」を指します。道路に置き換えると、本来その道路が備えるべき安全性が失われており、通行に危険をおよぼす状態のことです。
ただし、「穴があれば必ず管理瑕疵になる」というわけではありません。
穴の大きさや深さ、場所の環境、発生からの経過時間、道路管理者がその存在を把握していたかどうかなどを総合的に判断して、瑕疵の有無が決まります。「何cm以上の穴があれば瑕疵になる」という明確な基準は存在しません。
賠償請求が認められるには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。
- 事故が公の営造物(公道)で発生していること
- その設置または管理に瑕疵があること
- 実際に損害が生じていること
- 瑕疵と損害の間に因果関係があること

管理瑕疵が否定されやすいケース
次のような場合、道路管理者の責任が否定される、または過失相殺が大きくなる傾向があります。
- 発生してから極めて短時間で、管理者が把握できなかった場合
- コーンや看板などの注意喚起がすでに設置されていた場合
- 穴が小さく、通常走行であれば回避可能と判断される場合
- 大幅な速度超過や脇見運転など、運転者側の過失が大きい場合
補償される範囲と、認められないもの
請求できる主な項目は次の通りです。
補償される可能性がある費用
- タイヤ交換費用・ホイール修理費
- レッカー移動費
- 修理期間中の代車費用(相当な期間および車種の範囲内)
- 休車損害(営業用車両の場合)
- 評価損(修理後も車両価値が下がった場合)
一方で、「見舞金」は原則として認められません。
損害賠償の範囲はあくまで「事故と相当因果関係のある実損害」に限られます。物損事故の慰謝料は、基本的に認められないことがほとんどです。
修理費用も「事故による損傷の回復に必要な相当な範囲」に限られるため、事故と関係のない部分の修理費まで請求することはできません。
過失相殺は「ほぼ回避できない前提に」考える
道路陥没による事故では、運転者側にも過失が認められるケースが多く、その割合に応じて賠償額が減額されます。これが「過失相殺」です。
道路交通法第70条では「道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」と定めており、路面の状態への注意も含まれます。「穴に気づかなかった」という状況でも、路面への注意を怠ったとして過失を認定されることがあります。
過失割合を決める際に考慮される主な要素は以下のとおりです。
- 穴の大きさ・深さ・視認しやすさ
- 昼夜・天候などの道路環境
- 走行速度や運転状況
- 標識や警告表示の有無
たとえば、夜間で視認が難しい状況であれば運転者の過失は低くなる傾向があります。反対に、日中の明るい状況で大きな穴を避けられなかった場合は、運転者の過失が相応に認定されることもあります。
補償を得るための具体的な手順

事故から請求まで
はじめに、事故当日から請求までの流れは以下の通りです。行政相手のため、民間事故より時間がかかるのは通常です。途中経過の連絡がなくても、焦らず記録を残しながら対応しましょう。
- 事故当日
- 安全確保・警察へ届出
- 写真・動画の徹底的な記録
- 数日以内
- 修理見積の取得
- 道路管理者へ事故発生の連絡
- 1~2週間
- 必要書類を揃えて損害賠償請求書を提出
- 必要書類を揃えて損害賠償請求書を提出
- 1~3か月
- 管理者側の調査・過失割合の提示
- 金額や割合に不服があれば交渉
事故直後にやること

つぎに、事故直後に行うことを解説します。
まずは安全を確保し、二次被害を防ぐことが最優先です。その後、以下を速やかに行ってください。
- 警察へ連絡する(物損事故として報告)
- 証拠写真を撮影する(穴の大きさと深さ、車両の損傷状況、現場全体を多角的に記録する)
- ドライブレコーダーの映像を保存する(事故後に道路が補修されると証拠が失われるため)
- 目撃者がいれば連絡先を確認する
証拠写真に「これだけあれば十分」という量の目安はありません。後から「あの角度で撮っておけばよかった」となるより、撮りすぎるくらいがちょうどいいです。
道路管理者への請求に必要な書類
- 損害賠償請求書
- 交通事故証明書
- 事故状況説明書
- 現場写真・車両損傷写真
- 修理見積書・修理費用の領収書
- 車検証のコピー
- 運転免許証のコピー
- 代車費用の請求書・領収書(該当する場合)
道路管理者(市区町村・都道府県・国土交通省など)を特定して請求します。管理者がどこになるかは道路の種類によって異なるため、事前に確認が必要です。
道路管理者の見分け方
請求先を間違えると、手続きが大幅に遅れてしまうので「どこに連絡したらいいかわからない」ときは、以下を参考にしてください。
- 市道・町道:市区町村
- 県道:都道府県
- 国道
- 指定区間:国(国土交通省)
- 非指定区間:都道府県
もし判断がつかない場合は、市役所の道路管理課や土木課に電話で「事故が起きた場所の管理者を知りたい」と聞くのが最短ルートです。
警察に届け出をしている場合、警察が把握していることもあります。
交渉が難航したら「弁護士費用特約」を活用
行政との交渉が思うように進まない場合、または提示された過失割合や補償額に納得できない場合は、弁護士への相談が現実的な選択肢になります。
このとき活用したいのが、自動車保険に付帯されている弁護士費用特約です。多くの場合、相談料は10万円まで、弁護士費用(着手金・報酬金など)は合計300万円までを、保険会社が負担します。自己負担なしに専門家へ交渉を任せられるため、費用面のハードルは大きく下がります。
自分の保険証券を確認して、この特約が付いているかどうか一度チェックしてみてください。付いていない場合でも、法テラスの相談窓口を使うという選択肢もあります。
よくある質問

以下によくある質問をまとめました。参考にしてみてください。
Q1:自分の自動車保険を使ったら、道路管理者に請求できなくなりますか?
いいえ、原則として請求は可能です。
車両保険を使って修理した場合でも、保険会社が被害者に代わって道路管理者へ請求する「代位求償」が行われるケースがあります。ただし、保険を使うと等級が下がる可能性があるため、少額損害の場合は保険を使わず直接請求する方が有利なこともあります。判断に迷う場合は、保険会社に「道路陥没事故での対応実績があるか」を確認するとよいでしょう。
Q2:自転車やバイクでも補償対象になりますか?
なります。
国家賠償法の対象は「人」ではなく「公の営造物」です。そのため、被害者が自動車である必要はありません。自転車のホイール破損や、バイクの転倒事故でも、管理瑕疵と因果関係が認められれば請求は可能です。ただし、二輪車は「回避可能性」が厳しく見られやすく、過失相殺が大きくなる傾向があります。
Q3:その場で止まらず、後からパンクに気づいた場合でも請求できますか?
可能性はありますが、立証のハードルは上がります。
事故地点と損傷の因果関係を示す証拠(ドラレコ映像、直後の空気圧低下の記録、修理業者の見解など)が重要になります。「いつ・どこで・何が起きたか」を説明できないと、請求は難しくなります。
泣き寝入りしないために

道路陥没によるパンクは、誰にでも起こりうる事故です。
多くの人が「自分の注意不足だったのかもしれない」と感じ、そのまま諦めてしまいます。しかし、道路の管理状況によっては、道路管理者の責任が認められるケースは決して少なくありません。
道路陥没事故の補償は、「100%補償される」か「一切補償されない」かの二択ではありません。実際には、一定の過失相殺を前提とした部分補償となるケースが大半です。
それでも、
- 数万円から十数万円にのぼる修理費
- レッカー代や代車費用
といった費用が補償されるだけでも、実質的な負担は大きく軽減されます。
補償を受けられるかどうかを左右するのは、事故直後の対応です。「現場や車両の写真を撮影し、警察へ届け出たうえで、道路管理者に連絡する」この基本的な流れを踏むだけで、損害賠償請求が認められる可能性は大きく高まります。
また、過失割合や補償内容に疑問がある場合は、保険会社や弁護士に相談することも有効です。
「手続きが面倒そうだから」と最初から諦めてしまう前に、一度は請求のテーブルに乗せてみることをおすすめします。それが、不要な自己負担を避けるための現実的な第一歩になります。
注意事項: 本記事に記載されている情報は法的アドバイスではありません。実際に道路陥没事故に遭った場合は、弁護士や法テラスへの相談をおすすめします。


