こんにちは!アイカーマガジン編集部です!
クルマ選びで気になる燃費性能ですが、カタログを見ると「WLTCモード」や「JC08モード」といった聞き慣れない言葉が並んでいて、戸惑ったことはありませんか?結論を言うと、WLTCモードとJC08モードのいずれも「車の燃費を測定するための基準」を表す言葉です。
この記事では、これらのモードの違いをわかりやすく解説しながら、実際の走行により近いのはどちらなのか、自分の使い方ではどちらを参考にすべきなのかを詳しくお伝えします。
車を選ぶうえで「燃費の数字」をどう見ればいいのか迷っている方は、ぜひ最後までご覧ください。
WLTCモードの概要と測定方法

WLTCモード(「Worldwide harmonized Light vehicles Test Cycle」:世界統一試験サイクル)は、世界統一基準の燃費測定方法で、日本では2018年10月から新型車への表示が義務化されました。
車の燃費をWLTCモードで測定する際は、まず試験室に設置されたシャシダイナモメータというローラーの上に車両を載せ、実際の道路を走行するような速度変化を再現して燃費を測定します。

日常生活ではエンジンが冷えた状態で車を動かす場面が多く、より実際の使用状況に近い条件を反映しているため、WLTCモードでは、エンジンが完全に冷えた状態、いわゆるコールドスタートから測定を始めます。
さらに、市街地・郊外・高速道路の3つの走行パターンごとに測定を行い、それぞれのパターンで加速、減速、停止など実際の運転に近い動作を繰り返します。
普段の使用状況に近づけるため、積載重量についても、運転者や荷物が乗っていることを想定し、実際よりも重い状態で測定します。さらに、全車共通の条件で燃費を比較できるようにするため、測定中はエアコンやカーナビなどの電装品は使いません。
最後に、3つの走行モードそれぞれの燃費を計測し、実際の使用割合を考慮して総合的なWLTCモード燃費として算出します。この方法により、カタログに記載される燃費は、より実際の走行状況に近い数値となります。
WLTCモード導入のメリット

WLTCモードの導入により、カタログには「市街地」「郊外」「高速道路」ごとに燃費が個別に表示されるようになりました。普段の運転が市街地中心なら市街地モード、長距離移動が多いなら高速道路モードの燃費を参考にできるため、実際の使い方に合わせて車を選びやすくなります。
WLTCモードは国際基準の試験方法で、エンジンが冷えた状態からの始動や加減速の頻度、車両重量など、実際の走行環境をより反映しています。JC08モードに比べてカタログ燃費と実際の燃費の差が小さくなり、より信頼できる数値が得られるようになりました。
主なメリットは以下の通りです。
- 走行環境別の燃費表示で、利用者自身の使い方に合った燃費を選べる
- 実際の走行環境に近い条件で測定されているため、カタログ値と実燃費の差が縮小
- 国際基準に沿った表示で、海外メーカー車とも比較しやすい
- 車種ごとの燃費性能をより正確に比較できる
WLTCモードを導入することで、燃費性能の比較も現実的かつ正確に行えるため、自分のライフスタイルや走行環境に合わせて車を選びやすくなることがわかります。
JC08モードの特徴と測定方法

JC08モードは日本独自の試験方法で、2011年から2018年ごろまで「自動車のカタログ燃費を測定する基準」として用いられていました。
加速や減速、信号待ちなどの停車(アイドリング)を多く取り入れて実際の運転に近い走行パターンを再現しており、測定時間は約20分で、これは以前の基準の約2倍に延長されています。
走行距離は8.172kmで、平均速度は24.4km/h、最高速度は81.6km/hで測定が行われます。
また、エンジンが温まる前のコールドスタートからの測定も取り入れていますが、JC08モードで表示されるカタログ燃費は実際の燃費よりも20%〜30%高めに出る傾向があります。
測定は試験室内に設置されたローラー(シャシダイナモメータ)の上で行い、実際の道路を模した速度変化パターンに従って車両を走行させます。
エンジンが冷えた状態(コールドスタート)と温まった状態(ホットスタート)の両方で燃費を測定し、その結果をコールドスタート25%、ホットスタート75%の割合で平均して燃費値を算出します。JC08モードも、測定中はエアコンやカーナビなどの電装品は使いません。
モード名 | 導入時期(日本) | 主な特徴 |
---|---|---|
JC08モード | 2011年4月~2018年9月 | ・日本独自基準 ・コールドスタート25% ・1数値表示 |
WLTCモード | 2018年10月~ | ・世界統一基準 ・コールドスタート100% ・3モード+総合値表示 |
コールドスタートとホットスタートの違い
先述したコールドスタートとホットスタートの違いについては以下の通りです。
コールドスタート | ホットスタート | |
---|---|---|
定義 | エンジンやオイルが冷えた状態でエンジンを始動すること | エンジンが十分に暖まった状態でエンジンを始動すること |
オイルの状態 | 粘度が高いためエンジン内部の摩擦が増える | 粘度が下がるため摩擦抵抗が減少する |
燃焼効率 | 不完全燃焼が起こりやすく、通常より多くの燃料が必要 | 燃焼効率が向上し、必要最小限の燃料で動作 |
回転数・燃料消費 | 始動直後は回転数が高く、燃料消費が増加 | 始動直後も安定しており、余分な燃料消費が少ない |
季節の影響 | 冬場はガソリンが気化しにくく、さらに燃料消費が増える | 季節の影響を受けにくい |
測定モード例 | WLTCモードはコールドスタート100%で測定し、実際の使用状況に近い燃費値となる | JC08モードはコールドスタートの比率が低く、カタログ値と実際の燃費に差が生じやすい傾向がある |
WLTCモードとJC08モードを比較!
測定条件の違いは?
WLTCモードとJC08モードでは、燃費を測定する際の条件にさまざまな違いがあります。主なポイントは以下の通りです。
WLTCモード | JC08モード | |
---|---|---|
測定条件 | 標準化された国際試験コース | 標準化された試験コース |
最高速度 | 97.4km/h | 81.6km/h |
平均速度 | 36.4~36.6km/h | 24.4km/h |
走行距離 | 14.936~15.012km | 8.172km |
測定時間 | 約25分 | 約20分 |
積載重量 | TMH(同上) | TMH(車両整備質量+25kg等) |
平均速度が低いと加減速やアイドリングの回数が増え、燃費や排出ガスに影響します。また、積載重量が重いほど燃費は悪化しやすく、特に低速や加減速の多い都市内走行ではその影響が顕著です。さらに、走行距離や測定時間が短いと、実際の使用状況との乖離が生じやすくなります。
WLTCモードでは、速度区分ごとに走行距離の比率が定められています。
たとえば国内WLTCの場合、
- 低速(0~40km/h):20~35%
- 中速(40~60km/h):30±10%
- 高速(60km/h以上):45±10%
といった設定になっています。
カタログ燃費表示の違いは?
カタログに表示されている燃費の数値は、JC08モードとWLTCモードで異なります。
WLTCモード(複数数値) | JC08モード(単一数値) | |
---|---|---|
測定基準 | 国際基準 | 日本独自 |
表示数値 | 4つの燃費値(市街地・郊外・高速・総合) | 1つの燃費値 |
走行パターン | 市街地・郊外・高速道路を個別計測 | 市街地+郊外の混合 |
測定開始状態 | コールドスタート100% | ホットスタート多め |
車両重量 | 重め(運転者+荷物+積載分) | 軽め(運転者+110kg) |
実燃費との乖離 | より現実に近い | やや高めに出やすい |
30系アルファードの場合

アルファード30系のガソリン車(前期:2015年1月~2018年1月、後期:2018年1月~2023年6月)の燃費を比較すると、以下の通りです。
モード | 燃費(km/L) | 対象グレード |
---|---|---|
JC08モード | 9.1〜12.4 | 全グレード |
WLTCモード | 9.6〜11.0 | 全グレード |
└ 市街地 | 7.3〜7.8 | 2.5S(ガソリン・2WD) |
└ 郊外 | 10.3〜11.7 | 2.5S(ガソリン・2WD) |
└ 高速 | 12.0〜12.8 | 2.5S(ガソリン・2WD) |
よくある質問
WLTCモードとJC08モードについてよくある質問を集めました。
Q1.WLTCモードとJC08モード、どちらの燃費が信頼できますか?
A.一般的に、WLTCモードの方が実際の走行状況に近い条件で測定されているため、実燃費に近い数値となります。JC08モードは実際より高めに表示される傾向があるため、現状はWLTCモードの数値を参考にするのがおすすめです。
Q2.WLTCモードの「市街地」「郊外」「高速道路」燃費は、どう使い分ければいいですか?
A.普段の使い方に合わせて参考にしましょう。市街地走行が多い方は「市街地モード」、通勤や買い物で郊外を走ることが多い方は「郊外モード」、高速道路をよく使う方は「高速道路モード」の数値を目安にしてください。
Q3.カタログ燃費と実燃費はなぜ違うのですか?
A.カタログ燃費は標準化された試験条件で測定されますが、実際の走行では渋滞、エアコンの使用、積載量、運転方法などさまざまな要因で燃費が変動します。そのため、カタログ値と実際の燃費には差が生じます。
Q4.WLTCモードとJC08モードの両方がカタログに載っている場合、どちらを見ればいい?
A.できるだけWLTCモードの数値を参考にしましょう。より新しい基準で、実際の使用状況に近い条件で測定されています。
Q5.WLTCモードはすべての車に適用されていますか?
A.2018年10月以降に販売された新型車から義務化されており、現在はほとんどの新車でWLTCモードの燃費が表示されています。旧型車や一部の車種ではJC08モードのみの場合もあります。
まとめ
WLTCモードとJC08モードは、測定方法も数値の意味も大きく異なります。
近年はWLTCモードが標準となっており、より実走行に近い燃費表示として、多くの車選びの基準になっています。
最後に重要なのは「燃費=実燃費ではない」という視点です。
あくまで参考値であることを踏まえ、自分の走行環境やライフスタイルに合ったクルマ選びを心がけましょう。