こんにちは!アイカーマガジン編集部です!
エンジンオイルは、車のエンジンをスムーズに動かし、車の寿命を長持ちさせるために欠かせないものです。
特に、オイルの「粘度」は、エンジン内での動作に大きく影響する重要なポイントです。
そこで本記事では、エンジンオイルの粘度についての解説とともに「愛車に合うエンジンオイルの選び方」についてもご紹介します。
エンジンオイルの粘度とは?愛車を守るための基礎知識
エンジンオイルの役割
最初に、簡単にエンジンオイルの役割について確認します。
エンジンが「車の心臓」と例えられるように、エンジンオイルは「車の血液」と例えられます。
エンジンオイルの役割は、エンジン内部の洗浄や冷却、防錆、潤滑といったさまざまなものがあり、車を正常に動かすためには無くてはならない存在です。
エンジンオイルは消耗品であるため、定期的な交換を行うことでこうした機能を保つことができます。
エンジンオイルの粘度
エンジンオイルを選ぶにあたって、その基準の一つとなるのは「粘度」です。文字通りオイルの硬さ(サラサラ、ドロドロの程度)を示す指標ですが、製品によってその程度は異なります。
一般的に、エンジンオイルの粘度を上げることで、エンジンの保護性能を高めることができますが、燃費は悪化します。
反対に、エンジンオイル粘度を下げることで始動がスムーズになり、燃費も改善しますが、エンジンを高回転域まで使用した際のエンジンノイズや振動が強くなる傾向にあります。
エンジンオイルの粘度は変えても大丈夫
エンジンオイルは定期的に交換する必要がありますが、その際に異なるブランドのオイルに変えても基本的には問題ありません。
「指定された粘度の範囲内のオイルを使うこと」が条件であれば、粘度が違っていても大丈夫です。
ただし、粘度の違うエンジンオイルを混ぜてしまうと、添加剤のバランスが崩れてしまうため、初めから粘度が異なるオイルを混ぜて使うことは避けましょう。
エンジンオイルの違い
粘度を含めた、エンジンオイルの違いについて説明します。
愛車にぴったりのオイルを選ぶには、粘度以外にも以下の違いを念頭に置いておきましょう。
オイルの粘度
粘度の表記は「10W – 20」というように、数字とアルファベットを用いて行われます。
上記の例を用いて説明すると、左側の“10W”は「低温グレード」といい、数値が小さいほど低温始動性に優れています。
WはWinter(冬)の意味で、0W・5W・10W・15W・20W・25Wの6つのグレードがあります。
一方の右側の“20”は「高温グレード」といい、数値が大きいほど高温(100℃)での油膜保持性能が優れています。
数値には、
- 8
- 12
- 16
- 20
- 30
- 40
- 50
- 60
上記8つのグレードが設定されています。
なお、この“0W – 20”といった表記はSAE(アメリカ自動車技術者協会)による規格によるものです。
ベースオイルの種類
ベースオイルとは、エンジンオイルの主成分となるオイルのことで、エンジンオイル全体のおおよそ8割〜9割を占めています。
そのため、ベースオイルはエンジンオイルの性能に大きく関係しています。
ベースオイルは以下の3つに分類することができます。
- 鉱物油
- 化学合成油
- 部分合成油
以下でそれぞれご紹介します。
鉱物油
鉱物油は、原油を蒸留して作るオイルであり、安価であるというメリットがあります。
デメリットには他の2つよりも不純物が多いため、耐熱性が低く、酸化に弱いことが挙げられます。
化学合成油
化学合成油は、原油を化学分解して成分を整えたオイルで、耐熱性や耐久性を備えています。
しかし、高性能である分価格が高くなります。
部分合成油
部分合成油は、鉱物油に2割以上の化学合成油を混ぜたものを指します。
価格を抑えながらも、化学合成油の強みで鉱物油の弱点をカバーすることができます。
化学合成油をどのくらい配合させるかによって、さまざまな用途の車両に合わせることができます。
オイルの規格
エンジンオイルのグレードは以下3つの規格によって分類されます。
- API規格
- ILSAC規格
- JASO規格
以下でそれぞれご紹介します。
API規格
API規格は、米国石油協会(API)、アメリカ材料試験協会(ASTM)、アメリカ自動車技術者協会(SAE)の3者が定める規格です。
ガソリンエンジン用のオイルには「S」、ディーゼルエンジン用のオイルには「C」から始まる2桁のアルファベットで性能を示しますが、「S」と「C」それぞれに続くアルファベットが進むほど、新しいオイルであることが分かるようになっています。
ガソリンエンジン用の2024年現在の最新規格は「SP」であり、一般的には「SL」「SM」「SN」「SP」が取り扱われています。
日本においては、ガソリンエンジン用のオイルの規格として用いられることが一般的です。
ILSAC規格
ILSAC規格は、国際潤滑油標準化認証委員会(ILSAC)により定められた規格です。
国際潤滑油標準化認証委員会は米国自動車工業会(AAM)と日本自動車工業会(JAMA)が設立しました。
性能は「GF-数字」で表現され、数値が大きくなるほど高い品質となっています。
JASO規格
JASO規格は、日本自動車技術会(JASO)が定めている規格です。
小型・乗用車のディーゼルエンジン用としては「DL-数字」、トラックなどの大型に向けたものとしては「DH-数字」の規格が用意されています。
粘度を選ぶ上での注意点!愛車に最適なオイルを見つける方法
車種やエンジンの種類によって最適なオイルの粘度は異なります。
各自動車メーカーは、エンジンの特性に応じた粘度のエンジンオイルを新車販売時に充填しており、これが粘度選びの基本となります。
どのようなオイルが充填時されていたかについては、自動車の取扱説明書やインターネットで確認することが可能です。
また、取扱説明書などでオイルの粘度について「推奨」と「適合」として表記されていますが、迷った場合は「推奨」となっているものを購入すれば間違いはありません。
他のオイルを選択する場合でも、「適合」として記されている範囲内で選ぶようにしましょう。
走行距離が長い場合
愛車の走行距離が長くなると、エンジンの可動部分が摩耗し、クリアランス(隙間)が大きくなることがあります。
その場合、新車時に充填されていたオイルの粘度では、エンジンの燃焼室内の気密を維持できなくなることが考えられます。
そのため、エンジンオイルの粘度を1つ高いものにすること(例えば、「10W – 20」を「10W – 30」にする)で、燃焼室の気密性を確保し、エンジンの性能を復活させることができます。
目安となる走行距離は、車両の状況によりさまざまですが、10万km前後を基準に検討すると良いでしょう。
なお、逆に粘度を基準のオイルよりも低いものにすることは推奨できません。
上記と反対で、エンジン内部の気密性が悪くなり、エンジンのパワーや燃費が悪くなってしまいます。
また、ベースオイルについては、経済性という観点から、鉱物油や部分合成油を選ぶと良いでしょう。
燃費や乗り方で考える
粘度が低いオイルの方が、エンジンの回転に抵抗が少ないため燃費は良くなります。
基準となるオイル粘度にもよりますが、「○W- 20」や「○W- 30」(高温グレード側を見る)がおすすめです。
反対に、スポーツ走行をする場合や排気量の大きな車両については、エンジン内部の気密性や油膜による保護を目的に、高粘度のもの(「- 40」以上)がおすすめです。
こうした車両については、エンジンのパワーがあるため、粘度が高くなることによる燃費の悪化も少ないと考えられます。
また、エンジン始動後にアイドリングをしっかりしない方(すぐに発進する方)については、低温グレードが低いものがおすすめです。「0W – ○」や「5W – ○」を選ぶと良いでしょう。
ベースオイルについては、エンジンの保護を優先した合成油か部分合成油を検討すると良いでしょう。
粘度を誤るとどうなる?エンジンへの悪影響は?
エンジンオイルを選ぶ際に粘度を誤ると、エンジン内部の摩擦が増加し、燃費が悪化するだけでなく、エンジンの寿命を縮める可能性があります。
先ほども説明した通り、既定の粘度よりも低いものを使用すると、エンジン内部の気密が維持できなくなってしまいます。
エンジンオイルを選ぶ場合には、最初に愛車の既定オイル粘度を確認するようにしてください。
季節ごとのオイル選び
エンジンオイルは一般的に、低温グレードと高温グレードの数値の差が大きくなればなるほど高価格となります。そのため、季節に応じたオイルを選ぶことで、維持費を抑える効果が期待できます。
夏には「10W – ○」、冬には「5W ‐ ○」というように低温グレードを見てエンジンオイルを使い分けることで、経済的なメンテナンスを行えるようになります。
一方で、そうしたオイルの使い分けが面倒と思われる方はマルチグレードオイルを使用することで、単価は高くなりますが手間を省くことができます。
オイル交換を怠るとどうなる?
エンジンオイルは車の血液と例えられるものです。オイルの交換を怠ると、主に以下のような悪影響が発生します。
- エンジン性能の低下
- 異音の発生
- 燃費の悪化
以下でそれぞれご紹介します。
エンジン性能の低下
エンジンオイルには、エンジン内部の洗浄や冷却、防錆、潤滑といった役割があることをお伝えしましたが、オイルが劣化するとこうした役割を果たせなくなります。
そのため、エンジンの性能を十分に引き出せないばかりか、最悪の場合にはエンジンが故障することにもつながります。
異音の発生
エンジンオイルが劣化すると、エンジン内部の可動部品の摩擦を和らげることができなくなり、結果として異音が発生してしまいます。
エンジンから「ガラガラ」、「ゴロゴロ」といった音が聞こえだしたら、エンジンオイルが適切に交換されているか確認をしてみましょう。
燃費の悪化
エンジンオイルが汚れてしまうと、エンジン内部の洗浄が十分に行われなくなり、内部にスラッジ(汚れ)が蓄積していきます。
スラッジが溜まってしまうとエンジンの回転がスムーズに行われなくなるため、燃費が悪化してしまいます。
適切なオイル交換頻度
適切なオイルの交換頻度はどのようなものでしょうか。
使用環境にもよりますが、以下ではJAFが公表している目安の数値を表にまとめました。
車種 |
交換の目安 |
交換の目安 (シビアコンディション※) |
|
ガソリン車 |
NA車 |
15,000km、または1年 |
7,500km、または6カ月 |
ターボ車 |
10,000km、または6カ月 |
5,000km、または3カ月 |
|
軽自動車 |
NA車 |
10,000km、または6カ月 |
5,000km、または3カ月 |
ターボ車 |
5,000km、または6カ月 |
2,500km、または3カ月 |
|
ディーゼル車 |
10,000km、または1年 |
5,000km、または6カ月 |
※シビアコンディション:悪路走行が多い、走行距離が多い、山道な上り下りの頻繁な走行など
前提として、エンジンオイルの交換は車両によって異なるため、必ず取扱説明書などで確認をするようにしてください。
また、車両の種類(ガソリン車かディーゼル車か、NA車かターボ車かなど)によって異なっていることが分かります。
通常のコンディションとシビアコンディションがありますが、日本の道路事情を考えた場合、ほとんどの方はシビアコンディションを参考にすると良いでしょう。
中古車を購入した方が適切な粘度のオイルを選ぶポイントとは?
前のオーナーが使用していたオイルを確認
中古車を購入した際には、前のオーナーが使用していたオイルの種類を確認することが重要です。
前のオーナーが使用していたオイルの種類は、整備記録を確認することで、どういったエンジンオイルを使用していたかを知ることができます。
新車と中古車でのオイル選びの違い
先述のとおり、新車の場合にはメーカーが推奨するオイルを充填しています。
そのため、特別な理由がない場合にはそのまま使用することをおすすめします。その後エンジンオイルを交換する場合にも、粘度は新車時の数値を基準にしておけば、まず間違いはありません。
中古車の場合にも、メーカーが推奨する基準を参考にすることは同じです。
ただし、10万km程度走行している車両の場合には、エンジン内部のクリアランスをカバーするためにも高温グレードを1つ程度高くすることを検討してみると良いでしょう。
オイル交換はプロにお任せ!専門店の選び方
オイル交換の料金相場
オイル交換の料金は、使用するオイルの種類や量によって異なりますが、一般的には3,000円から10,000円程度が相場です。
ディーラーとその他の専門店(ガソリンスタンドやカー用品店)とを比べると、ディーラーの方が高くなる傾向にありますが、その分専門的なメンテナスを期待することができます。
また、オイル交換の2度に1度はオイルエレメント(フィルター)の交換も同時に行うことが推奨されます。
エレメントはエンジンオイルに混ざった汚れをろ過し、オイルの劣化を防いでくれるものですが、交換時にはその分の料金も掛かること覚えておいてください。
オイル交換時の注意点
エンジンオイルの交換は自分でも行うことが可能です。
ただし、専門的な知識と道具が必要になるため、初めての方は経験者のアドバイスを受けてから行うようにすると良いでしょう。
また、古いエンジンオイルは自治体のルールに沿った処分をする必要があります。
自治体によってはゴミとして廃棄できないこともあり、その場合には購入した店舗やガソリンスタンドに持ち込んで処分をお願いすることになります。
まとめ
エンジンオイルの粘度は車の性能に大きく影響します。
適切な粘度のオイルを選ぶには、車種や走行距離、使用環境を考慮しましょう。
メーカー推奨の範囲内で選択することが基本ですが、状況に応じて粘度を調整することも大切です。
本記事を参考に、あなたの愛車にぴったりのエンジンオイルを見つけてください。